鍛え方が間違えている

声のトレーニングということでは

間違った方法で声量や声域を上げようとしてしまう人がたくさんいます

声量を上げたい、声域を上げたいと考えるヴォーカリストは多いと思います。自身の身体を楽器とするヴォーカリストならば、 どんどん声量や声域を上げる。つまり新しい技を身につけて、ア ンサンプルに参加していきたいですもんね!

でも、間違った方 法で声量や声域を上げようとしてしまう人がたくさんいます。例えば、腹筋を鍛えることが、歌が上手くなることにつながる、という話を聞いたことはありませんか? これは歌うことに関係が ないわけではないのですが、基礎体力として必要、そして体幹を鍛えるためにも必要ということなんです。

【関連リンク】体幹トレーニングに欠かせない注目のアイテム

決して声量などを上げ る練習ではありません。日本人の場合、欧米人と比べても、基礎 体力が弱い人が多いので、そういう意味では良い、ということな んです。腹筋を鍛えて、力任せに歌おうとすると喉が潰れてしまうので、くれぐれも発声のために腹筋を鍛える、とは考えないよ うにしてください。また“体幹”は喉以外で鍛えておくと良い部 分ですね。詳しく言うと、腹筋、背筋、大腰筋(胸椎から腰椎に かけて存在する筋肉)、そこがしっかり固まっていないと、体幹 が安定できないんですが、この3つの筋肉を鍛えて安定させるこ とで、喉が安定することにつながるというわけです。

声量と声域を向上させる

声量は、どんなトレーニングによって向上するので しょうか。喉には、発音するための器官として、声帯というもの があります。声帯が息をせき止めるタイミングを利用する、つま り呼気圧を高めると音量は大きくなるんです。

息を吐こうとした ときに、声帯が閉じないと「あー……」という感じで抜けた音し か出ないですが、声帯が閉じた状態から「アッ」と開くと、声は 大きくなります。息を強くするというよりも、声帯を連動させて ちゃんと呼気圧を高めることができるかどうかで音量が決まって くるんですね。でも声帯の筋肉が弱いと、呼気圧を高めたときに 喉が潰れてしまうのです。

声帯の筋肉が弱いうちから息ばかり送 ると喉を潰してしまうし、声帯と吸気圧の両方鍛えていかないと いけない。だから最初からいきなりデカい音で発声しようとする と喉を潰します。小さい声でいいので、喉を力ませず、何ヵ月か 楽に出せる大きさの声で基礎発声練習(ロングトーンや音階練習)をやっていると、自然と大きくなってきます。焦りは禁物です。

一方、声域をもっと広げて高い声を出そうとしても出せないの は、首全体を締めているから。声域は輪状甲状筋というところの 働きにかかってくるんですが、僕のトレーニング時のイメージを 伝えると、

“首を締めないで、喉の必要な部分だけを上手く締めていく”

という感じでやっていきます。

息を吸う場所と吸い方

ヴォーカリストにとって、歌っているときの呼吸(ブレス)を どのタイミングで行なうか、ということはとても重要です。でも、 そのときどきに応じて、何も考えずにプレスをしている残念な人 は多いのではないでしょうか。

成功するブレスの方法

ブレスは、歌詞の内容が分かる範囲の位置で行うというのが大原則なんです。でもポップスの場合はわざとそれを無視してプレスすることで面白くなっている曲もあるので、例外はあります。 僕は口、鼻、両方でブレスするように指導しています。

人間 は生物上、鼻から空気を吸うように、鼻の器官で空気を湿らすようにできている。鼻から吸うとゴミも吸着できる。それに対して 口は食べ物を食べるための器官だから、鼻から吸うのが正しい、 という論拠なんですけど、歌う場合は必ずしも生理学的な側面だけじゃなくて、もっと複雑なことが絡んでいると僕は思っていま す。

例えば16分音符1つ分、32分音符1つ分とか、短時間で息を 吸わなくてはいけない場合では、鼻だけのブレスだと間に合わな いので、口と鼻から息を吸わないと歌うことはできないし、ジャ ンル的にも表現としてあえて口から吸う息を聴かせるということ もあるんですよね。クラシックではブレスを立てない(聴かせな い)ことが美しいとされているけど、それだとロックやソウルの カッコ良さは出ません。

好きなアーティストが、どのようにブレ スをしているのかを細かく研究してみるのも勉強になると思います。